此國(このくに)五十里のとまり北のはてにある高山也(なり)――。江戸時代の地誌「能登名跡志」にそう記された山伏山(184メートル、石川県珠洲市)は、能登半島の先端にある。古くから航海の目標となり、信仰の対象とされてきた。被災した能登半島地震後も頂へと訪れる人は絶えない。
山伏山の中腹。地震で崩れて柱だけになった鳥居に今月2日朝、ふもとの集落の人たちが集まってきた。
ある人は登山用ストックを両手に持ち、ある人は拾った木の棒を杖代わりに、10人余りが落ち葉を踏みしめながらゆっくりと登っていく。アカガシなどの照葉樹林が生い茂る森を抜け、15分ほどで雪の残る山頂に着いた。
こけむした木々の奥に、須須(すず)神社奥宮の拝殿がある。黒い能登瓦が陽光に輝くが、木造の建物はねじれるようにゆがんでいた。
宮司や氏子たちが集まった理…